
≪ヨンパチ虎(トラ)の穴vol.2-対談編≫
第2回のゲスト:書道家 中澤希水さん
・生粋の書道一家に生まれて▽
・続けるということ▽
・「書」を知ってほしい▽
・「書」が「道」になる▽
・『良筆は一生の宝』▽
・インタビュー後記▽
大濱:というわけで先ほどは入門させていただきありがとうございました。久々に書道に触れてみて、文字を書く一瞬一瞬に揺れ動く自己というものを見つめることができ、殺陣と似たところがあるなぁと思いました。本当に集中できました。楽しかったです。
希水:いえ。こちらこそ。
大濱:ではこれから対談ということでよろしくお願いします。
大濱:書道を始めたきっかけって何だったんですか?
希水: 両親共に書道家という家に生まれたので、幼少の頃より筆を持つのが当たり前、という環境で育ちました。だから「書道」という感覚はなかったんですよ。本当に生活の一部という感じでした。食事するとか、寝るとか、そういう生活の一部として、たまたま書があったって感じで・・。
大濱: なるほど。。サラブレッドだったんだ。もしかしてお父様とお母様は書で知り合ったんですかね?
希水: (笑)そうです。書道家を目指す人が全国から集まる大東文化大学の書道部で知り合ったんです。
大濱: なんか素敵ですね。書の道が愛の道!まさに書道一家!書道一直線!
希水: そうですね(笑)。食事するとか、寝るとか、そういう生活の一部として、たまたま書があったって感じで・・。書が生活の一部という環境で育ち、筆を持つのが当たり前という環境で、当然のように書に打ち込んでいました。物心つく前の作品も残っています。
大濱: へ〜。もうDNAレベルで「書」ですね。
ちょっと失礼かもしれませんけど、書道ってあんまりモテるオトコのイメージないじゃないですか。今の希水さんはかなりカッコいいですけど。実はうちの母親も書道家やっておりまして、少しやらされたんですけど、もうね、なんつーか、俺なんて女にモテたいというだけで恥ずかしくて半年も持たなかったんですから・・。といいつつ中学で何を選んだかというと「書道」ではなく「剣道」(笑)。結局モテないスポーツを選んじゃったわけだけど、小手くせぇし。いま考えるとそんな理由で辞めることのほうが余程カッコ悪いんだけど、中学生とか高校生とかガキの頃に、そういった書道やることを他人目線で見られている、というか見られている感覚、モテないかも・・という危機感はなかったですか?
希水: う〜ん。。なかったです。衣食住と同じレベルで考えていましたから。筆を持たないときは普通の中学生や高校生と同じように過ごしていました。インラインスケートをしたり、クラブに行ったり、今どきの学生生活でしたよ。自然に切り替えていましたね。
大濱: ちきしょ〜っ!焦りがないな。イケメンてずるいな(笑)。つ〜かモテただろうな。イケメンでイマドキで実は書道家!写真
大濱: もの心つかないころから続けていて、もういやだ。辞めたいと思ったことはないんですか?
希水: そうですね。。高校生のとき、書道と同じくらい絵を描くことが好きになって。進学の時にとても悩みました。美大に行くか、書だけを目指して大東文化大学を目指すべきか。本当に悩み抜いて、絵は好きでやること。自分は書で行こうと決意しました
大濱: あぁ、進学ね。どちらか道を選らばなきゃならなかったんだ。
希水: 大東文化大学は、書道を目指す人には最高の環境でした。大学入学後から、文化功労者であられる成瀬映山先生に師事しています。まさに「書道漬け」の生活でした。
大濱: 漬かっちゃったんだ、書道に。もう真っ黒ですね(笑)。
希水: 一切周りを見ないで、ノンストップで書道だけしてきました。
大濱: カッコいいな。貫くって。俺なんて遊び倒してたもんな。てめえの道がわからなくて。
希水: でもね、大学を卒業してから、約20年続けて来た書の方向性に息詰って。。
大濱: あらら。
希水: ・・・書から離れました。筆を持つのがいやになって、筆を持つことを辞めたんです。
大濱: 次に何をやろうとか決めて辞めたんですか?
希水: いえ。何もわからず、何も決めず・・。多分そのとき、また、書に戻る自分は見えていたんです。でも、筆は持ちたくない。しばらく、中国を行き来して、中国の史跡も巡ったりしました。ある面、開きなおっていました。どうせ筆を持てないなら、他のジャンルから吸収してやろうと真剣に考えて、実際に、絵を描いてみたり、美術館に行ったり。あ・・、あと、ビリヤードしたり。。
大濱: ビリヤード(笑)。おまえはトム・クルーズかっ!(笑)
希水: (笑)結局、3年弱、字は書きませんでした。
大濱: わかる。俺も芝居を離れた時期あって、俺の場合、調子に乗っていた鼻へし折られて、てめえ自身に人間的な限界を感じちゃって。でも、逃げてることに気づいてさ、結局戻ってきてヨンパチ設立。ここしかねえんだよな。
希水: そうですね。僕も、書を離れて3年くらい生活している中で、自分の人生を考えたときに「書しかない」って思って。なりわいとしてやっていけるというか、逆に自信が持てるものは書道しかなかったんですよね。まわり道したけど、結局、このまわり道のおかげで自分のDNAの中、書道の存在に気付く事が出来ました。大事な経験だったと今はプラスに解釈していますよ。離れた事で広い視野でものを見られるようになったなあ・・と。再び書に奮起し今に到っています。写真
大濱: 僕は役者さん以外にも、一般のかたに殺陣を教えているんですけど、指導って難しいですよね。役者さんは習う目的が明確ですけど、一般のかたに指導するときって悩んじゃいます。殺陣ったって何のことかわかんない人も多いだろうし・・。「殺陣」を「サツジン」って読んじゃうし(笑)。「一般の人に指導する」ことの難しさなどありますか?
希水: 書は大きく二つに分かれていて、芸術としての面と、実用としての面があります。僕は実用的なものとしての「書」を一般のかたに指導していますが、多くのかたは、「敷居が高い」「高尚」「難しい」というイメージを持つようです。殺陣もそうじゃないですかね?一般の人が触れてはいけないような部分があるようなイメージを持たれませんか?
大濱: ああ、わかります。殺陣も礼儀とか武道的なニュアンスがどうしてもあるから・・。
希水: 僕はね、守るべきことはきちんと守りながら、自分と同じ世代や下の世代に書の本当の良さを伝えて行きたいんです。敷居を下げようとは思いませんが、間口は広くしたいんです。今はインターネットをはじめ、自分の考えや行動を伝えるいろいろなものがあります。もっと、いろいろなことができるはずなんです。
大濱: なるほどね。。どうしても和モノって堅苦しいイメージがありますもんね。
希水: 書道界といわれる世界は堅く難かしい世界ですけど、「書」そのものは決してそんな事はありません。殆どの方が筆をもった経験はあるだろうし、書の素材である、漢字や平仮名は万人が日常使っているものだし、街を歩けば筆文字の看板が目にとまるし。とても身近なものです。
大濱: たしかにそうだよね。俺、字書けるもん。
希水: そうです(笑)。書の伝統的な良い部分は継承しながら、間口を広め、書をもっと身近に感じてもらいんです。日本人のDNAに必ず組み込まれている書に対する心を再認識してもらうためのきっかけづくりは、私の使命だと思っています。
大濱: お〜〜〜!かっこいい!そうだよね。年賀状とか、お中元とか、和の心って、一見面倒くさいけど、より効率的になってくる世の中で、年賀状とか手書きでもらったりするとなんかすごくうれしいもんな。真心が伝わってきますよね。写真
大濱: 「書」って文字じゃないですか?書道って文字の道でしょ?「文字」が「道」になる。これって不思議ですね。
希水: そうですね。書道や華道、茶道もありますね。人間形成のための精神鍛錬ですよね。どれも生活の中で生かせるものですが、書やお茶と向き合うことで人間として鍛えられるという考え方はすばらしいと思います。
中国では、「書道」ではなく「書法」なんですよ。徹底的に技術性を重んじるんです。技術面での鍛錬の厳しさは日本人の想像をはるかに超えるものがありますよ。
大濱:うお〜。「道」も「法」も厳しそう。
希水: 書に限らないですけど、「道」がつき、精神性を重んじるという日本人特有のこの精神のおかげで、他のジャンルでも、クオリティの高いものが生まれて残って来たんだと思います。写真
大濱: 一般的と言えない「書」を仕事にするにあたっての思いってありますか?
希水:とにかく、一生現役、一生修行です。ゴールが見えないからこそ、立ち向かいます。そこが最大の魅力かもしれません。書は約3500年の歴史がありますからね。一生かかっても学びきれない程、学ばなければいけないことがありますから。
大濱: そう考えると文字の歴史ってすごいことですね。今はね、キーボード叩けば簡単に字が出てきちゃいますから、なかなかそう思えなくて。
希水: 今は、便利といえば便利な時代です。インターネットで情報を得ることも、他のジャンルから何かを得る事も簡単にできます。だからこそ己をしっかりと持ちながら、常に柔軟な頭で、手習い、目習いを続けていくことが必要だと思っています。古典に立脚しながら、今を生きた自分を組み込んで、今後も一生、書という心の旅を続けていきます。『良筆は一生の宝』ですから。
大濱: 希水さんは顔もカッコいいけど、言うこともやってることもカッコいいですね。今日は「和の道」の真髄を聞かせていただき、本当に勉強になりました。ありがとうございました。
希水: ありがとうございました。
大濱: お互い一生続けていきましょうね。
対談を終えて (中澤希水)
最初、多少の緊張がみられたものの、徐々に気持ちが入り、筆を持ち、紙に向かう『目』が変わっていくのが伝わってきました。(きっと殺陣をする時もこの目になるのだろうと思いました)
こういった気持ちの切り替えは一般の人は時間のかかるものです。やはりすごいと思いました。
枚数を重ねる度に、改善点を修正していく柔軟な所や、「琥」の縦にのびる線の潔さ。見ていて心地よかったです。精神面における、殺陣と書の共通点を強く感じました。今度は私が殺陣を入門しなければ!と本気で思いました。
インタビュー後記
いやぁ、今回トラは入門までさせて頂いて、本当に楽しかった。久々に書道に触れてみて、子供の頃習った感覚とは違う、コンマ何秒で揺れる自分を感じ取る事ができ、書もまたライブだな、と思った。
希水さんは「和の道」を行く人特有の静かで柔らかい佇まいの中に意志の強さをすごく感じた。半紙を前にした時の空気と一体化した感じ、とても素敵でした。
「終わりがないから、続けている」と発言した希水さんに、「道」を極めようと苦しむ心の奥の戦いに共通の魂を感じた。俺が殺陣も役者としても追い求める究極の引き算、「華やかなる静寂」。お互い信じる道を行きましょう!
大濱琥太郎写真
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文責:48BLUES事務所
タイトル&ページデザイン:K.Yonekura
撮影:Photos Dotties
協力:紫雲山瑞聖寺報恩堂
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