≪ヨンパチ虎(トラ)の穴vol.1≫
48BLUES代表 大濱琥太郎が各界のプロフェッショナルと語る「ヨンパチ琥(トラ)の穴」。第1回のゲストは、シルバージュエリーデザイナー、城山宜弘さんです。
・ゲスト紹介
・シルバーデザインへの道
・デザインへのこだわり
・この道を選んで良かった事
・カッコいい男のイメージ
・同じ道を目指す人たちへ
・大濱琥太郎について
・10年後の自分
・伝えたいこと
・インタビュアー後記
城山宜弘(しろやまよしひろ)さん
シルバージュエリーデザイナー。2003年に『GRYPHON silver designs』を設立(http://gryphon.jp/)。材質やディテールにこだわったフルオーダージュエリー製作を中心に活動を展開中。シルバー製作集団「SILVERGUILD」所属。写真

大濱:さぁ!ついに始まりました!ヨンパチのトラこと、私、大濱琥太郎が各界のプロフェッショナルとセッションする企画、名付けて「ヨンパチ トラの穴」。ガルル〜っ!・・というわけで記念すべき第1回のゲストは、シルバージュエリーデザイナー、城山宜弘さんです。よろしくお願いします。
城山:よろしくお願いします。
※編集部注:と、ここで対談場所の恵比寿のバー“zero-go"の皆さまと写真を撮ろうではないかということになり、かなり貧弱なタイガーマスクと記念撮影(汗)。
大濱:え〜と、早くもマスクを脱ぎました。暑いっ!かゆいっ!カブれるっ!改めまして・・、城山さんもヨンパチと同じ昭和48年生まれなんですよね。
城山: はい。
大濱:どんな経緯でシルバーデザインの道に入ったんですか?
城山: 地元が札幌なんです。2001年に東京に出てきたときは、何一つ決めてなかったんですよ。 札幌で大学を卒業した後、中古車情報誌の営業をしていたんです。人間関係は本当に良い職場だったんですけどね、とにかくハードで体調を崩しちゃって・・。胃と食道の病気で、結局、2年間療養しました。療養暮しを経験して「人間は元気でいるのがいちばん。自分の好きなことをして生きていこう」って思ったんです。自由に暮らそう。東京で生きていこうって思って・・。本当に何も決めないで東京に来ました。
大濱: 何も決めないで出てきちゃったんだ(笑)。ある意味、すげ~勇気!俺ならそこで病気になっちゃいそうだけど(笑)。
城山: (笑)でね、彫師のかたと知り合いになったんです。デザイン能力のすごい人でした。「彫師がシルバーについて知らないのはまずい」ってことで、その人がシルバー関係の道具を一式買って勉強を始めたんです。僕は、傍で友だちとして見ていただけなんだけど、その彫師さんにいろいろ教えてもらってね、結局、彫師さんにその道具を譲り受けました。2002年頃かな。
大濱: へぇ、じゃ、まったく独学なんですか?学校で勉強するとかじゃなくて?
城山: そうです。独学です。それから、試行錯誤しながらシルバーのアクセサリーを造る仕事を始めました。最初は趣味だったし、仕事にするつもりはなかったんですよ。まず、自分の指輪を造ってみる。「いいね」と言ってくれた友だちにプレゼントする。そうしてると、そのプレゼントした人の友だちが気に入ってくれてオーダーが入る。そんな感じでした。自分の造ったものを人が喜んでくれるってことを知って仕事にしたって感じかな。最初は「原価でいいよ」って言って造っていたんです。そのうち「利益を乗せてもいいのかな・・?」って感じで自然と仕事になっていきました。
大濱: それって、いい感じの流れですねぇ。
城山: そうですね。ありがたいことだと思っています。オーダーが順調に入るようになったので2003年にブランドを立ち上げて、そうしたら次は「知らない人にも広めてみたい」っていう目標ができて・・。次は「店舗にも自分の作品を置きたい」って目標ができて・・。で、次は「皆に認知してほしい」って思い始めて・・。
大濱: なるほどね。。自然にモノ造りの道が出来てきたんですね。
城山:ええ。僕はね、人間が好きなんです。あと旅が好き。人に会って、教えられて、僕はここまで来ることが出来たと思っています。「逆通信教育」みたいな感じですよ(笑)。人に会えば必ず何か勉強になる。自分から訪ねて行って、そして、いろいろ教えてもらうんです。
大濱:それは人徳ですよ。
大濱:城山さんがグリフォンを立ち上げてから3年?どういうこだわりを持ってデザインしているんですか?
城山: 僕はね、あえてこだわりを持たないように心掛けているんです。枠を外す意識は常に持っています。骸骨をモチーフにしたものも造るし、かわいいものも造る、おどろおどろしいものも造る。こだわりを持ちすぎると、驕りが出てきたり、排他的になったりする危険性があると思うんです。僕はそういうふうにはなりたくないから。
大濱:おおっ。意外ですね。悪人ヅラなのにいい人(笑)!
城山:顔は関係ないじゃないですか(笑)。
大濱:俺なんて喜怒哀楽が激しすぎて・・。痛いお言葉をいただきました。
城山:でも、集団を率いていく立場の人って、人の輪を大事にしていくタイプと、先陣を切って冷たいことを言って進めていくタイプがあるんじゃないですかね。
大濱:(泣くマネ)あ・・ありがとう。城山さん、やっぱりすごい。やっぱりオトナ。でも自然体!そんな城山さんに質問です。モノづくりってどこがいちばんきついんですか?どのあたりが苦しい?
城山:いざ作り始めると苦しいことはないんです。批判も褒め言葉もすべて自分の血肉になる。でもね、集中して作業を始めるまで、多くの煩悩から煩悩へと右往左往して仕事に取り掛かれない。苦しいといえばそこだけかな〜。
大濱:ああ。なんとなくわかります。一人の仕事ってそこが辛そうですね。エンジンかけるまでがね・・じゃ、自分はここは優れているって言うか、売りと言うか?そういうのってあります?
城山: デザインです。デザインで困ったことはないんです。デザイン的な産みの苦しさは感じたことがない。シルバーアクセサリーの製作って、大きく3つの工程があるんです。デザイン、彫る、鋳造。この3つ。デザイン以外の技術的な部分も大きく影響してくるんです。こういうものを造りたいけど、技術が追いつかないから表現できない・・とかね。表現できないと悔しい。そういう思いを感じることはあります。技術に関してはね、僕はこれから勉強していかなければならないと思っています。でもね、自分を卑下していても何も始まらないでしょ?自分を他人目線で見て、自己批判と自己陶酔と両方持っていたいんで良いところは良いと認めて、ポイントを押えて自分を管理して行きたいんです。でも、だらしないんだよな〜(笑)。オーダー、まだ納品してないんですよ、今年に入ってから。納期過ぎてるんですけどねぇ。
大濱:ダメじゃないですかっ(笑)さっきの言葉撤回(笑)。
城山:ええ..僕、ダメなんです..(笑)写真
大濱:え〜、では気を取り直して。どのようなとき「この道を選んで良かった」と思いますか?
城山:人が喜んでくれたときです。納品したアイテムを見てお客様が喜んでくれる。でもそれだけじゃダメなんです。あとでね、「これしてたら褒められちゃった」って聞いたりすると本当に良かったな・・って。装飾品って完成した時点では未完成だと思っているんです。そのお客様が身に着けて、お客様を輝かせたとき初めてひとつの作品として完成する。だからもちろん、買ってくれた人自身が満足してくれなくちゃ困るけど、それだけに留まらずね、その周りの人からも「良い」と言ってもらえるものを造るべきだって常に意識してます。僕ね、こう思うんですよ。自分っていう一つのパーツがあって、買ってくださったお客様というもう一つのパーツがある。二つが重なって初めて完成するって。
大濱: あ。それ解かります。僕も芝居していてそう思います。自分のやりたい表現をやって自分が楽しむのはどうでもいいんです。芝居をする自分を自分が楽しんでいたらどうにもならない。人が喜んでいる姿を見て初めて自分も楽しく良かったって思える。自分が楽しんじゃったらカッコ悪いよな~って。演劇やってる奴って自分が気持ちよくなることしか考えてない。かなり恥ずかしい。俺はそういう人といるとかなり排他的になりますね(笑)。お客様に失礼だよね。
大濱:ところで、城山さんが考えるカッコいい男ってどんなイメージですか?
城山:う〜ん。。常にカッコいいほうがいいんだろうけどね〜。降りた時はフツーでいいんじゃないかな〜って。僕、笑わせたいんですよ。見た目がこんなだから、ギャップ狙いってわけじゃないんですけど。。笑いがね、DNAに組み込まれてるんだよね〜。
大濱:俺もそう!33歳にしてタイガーマスクを被っている。マジでやってると急に何か恥ずかしくなる。
城山:あと、謙虚さとかバランス感覚かな?人を認めようという姿勢を持つというのは最低限のルールだと思う。オリジナリティにこだわりすぎるのも意味がないと思うんですよ。こんなものは今までになかったって独自性を売りにするとかね。だって、生きている間、いろいろなものから影響を受けているわけで。見たり聞いたり、そういう情報を総合して造っているわけでしょ?まったくのゼロからってあり得ないですよ。まあ、ものづくりですからね、オリジナリティが大事ですよ。でも、常にそれは伝統や型を模倣することからはじまっている。どんなに独創的なアイデアを生み出して賞賛を受けたとしてもそれは模倣から入ったものであるという戒めを持つようにしている。そういうふうにしてるから自分がカッコいいとは思わないけど、そういう意識を持って自分を謙虚に、自負も小さじ一杯くらい持っている(笑)。こういうバランスの良い人をカッコいいと思う。ヨンパチなんかは、伝統文化をあえて前面に押し出してるから、こういう感覚わかってもらえますかね?やっぱり型が大事なんでしょ?
大濱:まあ、伝統文化を逆手に取ってギャグやっちゃってますけどね。ギャグやるためにはある程度基本ができてないとダメですね。殺陣なんかも素直に模倣するのが意外と難しい。それがだんだん身についてくる。そのうち、人それぞれ身体が違うのでそれが自然と個性になってくる。何もしないで個性、個性って言ったってさ、自分で言う個性ってかなり甘えた線でモノ を言っちゃうから。没個性までやりきった方がかえって本当の個性が見えてくる気がする。あとはどう表現するかですかね。写真
大濱:城山さんはこの仕事を目指す人たちに伝えたいことってありますか?
城山:日本では技術に走る人が多いかもしれない。執着しないで謙虚に学ぶ姿勢を持つことかな。執着しないって大事だと思う。謙虚さもね。
大濱:言えてる。モノ造りする人が理屈で図に乗る感じは僕も苦手です。受け売りであれこれ言うだけの人って結局、言霊がないからね。すぐバレるんですよ。そういう時ですね、俺、「てめ~どういうことだ」って始まっちゃうんです(笑)。
城山:でもありますよね。「表現することが好きな人」と「表現する自分が好きな人」の差。ま、これこそ知人がおっしゃっていた話の受け売りなんですけども(笑)
大濱:いいこと言うね〜。握手しましょう(笑)!
大濱:さて!伝統文化にまっこうから取り組むヨンパチブルース大濱琥太郎(笑)!城山さんと初めて会ったのって009GIG(編集部注:2006年11月の第9回公演)を観にきてくれたときですよね?大濱琥太郎の第一印象ってどんな感じでした?
城山:目です。目力につきます。役者以外にも、演出とか、ヨンパチブルースの運営能力とかいろいろあるんだろうけど、目力につきました。声も迫力があって驚いた。同じ年齢でもここまでになれるんだな・・って。怖いとは言わないけど(笑)、雰囲気は深い。久しぶりに印象に残る人でした。
大濱:誉められちゃったのかな(笑)。恥ずかしいので、ここで一旦切らさせていただいてもよろしいでしょうか?
大濱:僕たち33歳ですよね。10年後どうなっていたいですか?
城山:アクセサリーって別に生活に必要不可欠なものじゃないですよね?とくに日本の場合はアクセサリーを身につける文化の歴史が浅いですよね。やはり本場は欧米なんですよね。この仕事を始めるまでは見向きもしなかったんですけど、今とても「世界」というものに興味があるんです。欧米のキリスト教圏はアクセサリーの本場だから、まずはその辺に進出したい。でもね、アパレルの世界での世界というと、多くの人間は欧米しか見ていないでしょ?イスラムの世界に興味があるんです。コーランを読んだりして、イスラムの文化を知って、進出してみたい。日本って、愛国心を持つことが悪いことのように教育されちゃうことがなきにしもあらずのところがあるじゃないですか。日本の文化の誇りを持ちつつ、世界のマーケットで見てもらいたい。あえて日本人的な作風を持つ努力をしなくても、自然に日本文化のテイストが出ると思うんですよね。そのためにも、自分の発言力含め、実力をつけていきたいと思います。
大濱:グリフォンのアクセサリーに興味を持ってくださるかたに伝えたいことはありますか?
城山:アクセサリーって気分で変えるものですからね。毎日、身につけてほしいとは思わないけど・・。でもね、一生手放さないでほしい。僕は東京に出てきたとき、本当に何者でもなかったんです。そんな僕でも、人に喜んでもらえるんだって。喜んでもらえたなら、持っていてほしいな・・って。
大濱:なるほどね。モノ造りの仕事ってかたちに残るからうらやましいな。舞台って儚いですからね。記憶に残ってもらえたらいいかな・・なんて思ってますけども。これからもコワオモテ系同士がんばって生きていきましょうね。僕たち、見た目がコワオモテ系ですけど、これってコンプレックスですよね。人を緊張させないように、って常に気を使っちゃいますからね。気を使われることが申し訳なくて、気を使いすぎて逆にドツボにはまることもあるし。
城山:そう。僕、人みしりが激しいし・・。なかなか人と仲良くなれないんです。
大濱:あれだね、中学や高校の時クラスメイトだったら半年は口利いてなかったかもね。
城山:あ、言えてる(笑)。
大濱:俺なんてケンカ吹っ掛けちゃいそうなんだけど。。でもさぁ、半年ぐらい喋ってない奴の方が、今思うと学生時代の親友だったりしない?
城山:そうそう。
大濱:今度、シルバー造りの過程も勉強させてください。そして、一緒に何か表現できたらいいですね。本日はありがとうございました。楽しかったです。
城山:こちらこそ。写真
対談を終えて
今回、初の試みだったけど、ほんと楽しかった。勉強になった。真剣にモノ造りをやってる人間と接すると、こっちも、よっしゃあ!って気分にさせられる。城山さんが「表現することが好きな人」と「表現する自分が好きな人」の差を発言した時に、この人わかっているなぁと、信頼できる表現者だなぁと思った。言葉一つ一つを大事にしながら、その言霊に嘘がなく、自分を大きくも小さくも見せることもなく、自然体でいる姿はすごく素敵だと思った。いい雰囲気を醸し出していた。城ちゃん!お疲れさま!ありがとう!今度ゆっくり遊ぼうぜ!城ちゃんの造ったシルバーを身につけて、ヨンパチが舞台で暴れる。そんなセッションをしてみたい。じゃ、またね!
大濱琥太郎写真
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文責:48BLUES事務所
タイトル&ページデザイン:K.Yonekura
撮影:Photos Dotties
協力:zero-go
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